~ 医療スタッフと患者さんに居心地の良さを提供する空間づくり ~
今回で第3回を迎える特別企画 “建築家インタビュー レッドシダーを活かすデザイン”に登場していただくのは、第2回に引き続き、アルボス 一級建築士事務所の関根裕司さんです。
前回は、都市建築の中でレッドシダーの特徴を活かしてリノベーションに成功した実例をうかがいましたが、今回は関根さんの得意とする分野の一つであるクリニックの実例を紹介していただきました。

関根さんが手がけてきた数多くの医院建築の中の代表的なクリニックにもレッドシダーが使われています。
その外観からは、とてもクリニックとは想像できない建物ばかり。
カフェと見間違えてしまいそうなクリニックもあります。


こうした医院建築では、医師と患者さんどちらにも配慮が必要。
関根さんは、機能性を追及するのはもちろんですが、「地域や社会に貢献したい」「患者さんに安心感を与えたい」などといったドクターの思いを空間やかたちに還元させながら、温かみのある建築であることを心がけているそうです。
他にも、草原に建つ別荘のようなたたずまいが印象的な医院建築も手がけていらっしゃいます。


いかにも病院といった外観ではなく、開放的であり敷居の高さを感じさせない、そんな優しさがある印象です。
また、レッドシダーのルーバーを使用することによって目隠しの役割を果たしながらも、すべてを覆い隠すことなく風通しも配慮した外観の医院建築も紹介していただきました。


こちらのクリニックは、狭い敷地の中にレッドシダーの塀で囲われた小さな中庭が、待合室に広がりを感じさせ、癒しの空間を提供しています。
関根さんはレッドシダー以外にも、高広木材の取扱製品であるティンバーストランドLSLやOSB合板などを使用した事例も多く、その中のひとつをご紹介します。


こちらのクリニックでは扉にティンバーストランドLSLを使用しています。
ティンバーストランドLSLはポプラやアスペンの木片を圧縮してつくられていますが、関根さんはその作為的ではない模様に面白さを感じるとのこと。清潔感のある白い壁と木片が持つ自然な質感との対比が、画一的な病院のイメージを変えています。
最後に関根さんとのお話の中で印象深かった言葉をまとめました。
「木も人間と同様に一本一本に個性があります。
山の北側で育った木と、南側で育った木では、木目が違います。
斜面で育った木と平地で育った木では、曲がり方や節の付きかたが違います。
流通する製品という名で扱われる製材は、どこか、サラリーマンと似ています。
サイズと節の量だけで、区別され、一つ一つの顔や性格を見てもらうことはほとんどありません。
本当は、節の大小や木目などの個性があるので、それに応じた使い方をすることが必要です。
私は、木材は生き物で、思わぬ動きをするから面白いと思っています。
曲がったものはダメということはなく、曲がるのが「木」であり、それが魅力なのです。
戦略的に無理やり個性を作り出そうとしているのが、現代社会です。
「木材」のような自然に生まれてくる個性に接するのが何よりの癒しではないでしょうか。」
関根さん、2回に渡りいろいろな意見、感想をありがとうございました。
建築DATA
- 設 計
- 有限会社アルボス
一級建築士事務所 関根裕司