~ 木材を外装につかう―特注木製ルーバーの提案とは ~
レッドシダーの魅力をお伝えする企画“建築家インタビュー レッドシダーを活かすデザイン”の第2回目は、アルボス一級建築士事務所の関根裕司さんにお話をうかがってきました。
関根さんと高広木材とのおつき合いは15年前にさかのぼります。これまで数多くの物件にレッドシダーをご採用いただきました。
その中で今回ご紹介するのは、ビジネスホテルの『ピリカスタイル』です。

『ピリカスタイル』は築20年のビジネスホテルを改修し、2008年7月、装いも新たにオープンしたリノベーション物件です。建物の外観にはレッドシダーのルーバー部材を使用。都会の風景にレッドシダーの持つ質感がうまく調和し、建物全体をより印象的にさせています。
では、ここで私たちが設計段階でご提案したポイントを少しだけご紹介します。
まず提案のポイント1つ目は、「斜面挽き加工」。ルーバーとして部材を取り付けた時に、傾斜がつくようにするための加工です。斜めに取り付けることで、雨が降っても水が流れて溜まらないのでレッドシダーの耐久性を最大限に生かすことができます。
そして、2つ目のポイントは、木材に塗料をしみ込みやすくするための「表面ラフソーン加工」。オイルステインをたっぷりしみ込ませて耐久性を高めるには、ラフソーン(粗木)仕上げが適しています。
このように木材を長持ちさせるノウハウをもとに、材料はオーダーメイドでご提供しました。関根さんの思い描くデザインに対応しながらも、レッドシダーの耐久性の高さを生かし、さらに長持ちさせるためのポイントを押さえています。
関根さんは『ピリカスタイル』の設計にあたり、外観だけではなく内装や家具、照明にいたるまで総合的にプロデュースされています。ベッドのマットレスにも関根さんのこだわりが反映されているそうです。そんな『ピリカスタイル』は、ビジネスホテルの無機質さとはかけ離れた落ち着いたやすらぎの空間が広がるホテルです。
関根さんに今回の事例についてうかがいました。
「私の手がけた『ピリカスタイル』は、働く人たちのためのホテルとしてのあり方から考えました。
ビジネスホテル業界では、供給者側の意向が重視される傾向があり、傷つきやすく手間がかかるという理由から、土の塗り壁や節のある木を使うことが敬遠されてきました。
ですが、私は従来のイメージとは一線を画し、表層の美しさとか、管理化をもとめたルーティンなスタイルが生み出す画一化した表現を追うことなく、気のおけない寛容的でベーシックな日本スタイルを取り入れようと考えました。
外装に「無垢の木材」を使用したことにも、私なりのこだわりがあります。
木や石などの表層を精巧にスキャンしたビニルクロスのような場合、人間が限定する予定された美しさを超えることはなく、「無垢の木材」や素材の思いもかけない表情や質感から放たれる無限の生命力が感じられません。
現代社会では、自然と精神的にシンクロするライブな感覚が失われがちであり、情報を通して経験したような気分に錯覚してしまい、それが生み出す閉塞感や限界感が、現代人のストレスを生み出しているのではないでしょうか。
紙媒体や、写真を通しては、素材感の違いはあまり感じられませんが、手に触れ、肌で感じる空間のなかでは正直なものとそうでないものとの違いがはっきりしてしまいます。
たとえば木や石などの表層をどんなに精巧にスキャンした壁紙でも、荒々しいコンクリートなどの素材感の強いものに囲まれると頼りのないものになってしまい、調和が取れません。
その点、「本物の木材」にはコンクリートの質感に負けないパワーがあり、相互がうまく調和されたと感じています。
画一的になりがちな都市建築の中で、木材はさまざまなデザインに対応して形を変え、個性ある演出ができる最高の素材だと思います。」

素敵なホテルに生まれ変わった『ピリカスタイル』。コンセプトを印象づける木の外観に、私たちが提供した材料が活かされていることを実感することができました。今後も単なる木材の販売にとどまらず、今回のような提案を行い設計のお手伝いをしていきたいと思います。
建築DATA
- 設 計
- 有限会社アルボス
一級建築士事務所 関根裕司 - 物件名
- ピリカスタイル改修工事
- 施 工
- 株式会社 小川組
- 使用部材
- レッドシダー 特注
外部木製ルーバー部材
表面ラフソーン
無節 50x140x5400 50x140x4800
斜面挽き加工