PORTFOLIO 建築事例
街並みと優しく調和する木箱
―木造建築の外装を無垢の木材で覆う選択とは
時とともに木材がグレーに変化する自然のエイジングによって、街並みに建物が溶け込んでいくことをイメージ
■使用部材
外壁: レッドシダー 本実サイディング T17×W76mm TG-1776C
ドイツ リボス社の自然健康塗料、カルデット(クリアー色)を塗布
「西之谷の住宅 kigi」
第15回木材活用コンクール 木材活用特別賞受賞
第56回神奈川建築コンクール 優秀賞受賞
■設計者コメント
「周囲は古くからの住宅地です。近所にはこの街に三代暮らしている方もいらっしゃり、僕ら家族はその中に新参者として入っていくわけですから、どうすれば建物が周囲と調和するかをまず考えました。
しかし、準防火地域で木造の建物に使える外壁の材料は、窯業系のサイディング、金属板、モルタルなどが主流であまり選択肢がありません。こうした人工的な素材で外装を仕上げてしまうと、新しく建てる住まいが周囲から浮いてしまうと感じました。そこで、いろいろ調べ、下地に耐火性のあるボードを張ることで、仕上げには通常の無垢の木材を張ることができる工法が見つかり、木をつかうのはおもしろい!と直感しました。
建物自体が木造なのですから外壁に木を使うのは自然なことだし、せっかく木を使うなら、アクセントとして部分的に使うのではなく、外壁すべてを木で覆うほうが潔いなとも感じました。木の外壁は、エイジング(経年変化)によって次第にグレー色に変わっていきますから、時間とともに段々と建物が周囲の街並みに埋もれていく様子が思い浮かんできました。
こうして、木材を外壁に使うことを決心しましたが、実際の木材の経年変化や風雨に耐える為のディティールは、レッドシダーや杉材が外壁に使われた古い住宅を見てまわり参考にしています。昔は新建材がさほど普及していなかったので、塩害や風雨にさらされる逗子や葉山の海沿いにはレッドシダー張の建物がいくつか残っています。
外装にここまで大々的に木材を使うのは初めての経験でしたが、今回は自分達の住まいなので、ある意味で身銭を切った実験だと考え、今回の工夫の長所や短所を暮らしながらチェックしたり、今後のメンテナンスから得る経験を生かし、お客様にはさらによい提案をしていきたいと思っています。」
画像提供・設計:ハラダデザイン 原田一朗