REPORT 外壁・外構を木で仕上げること 02
無垢のレッドシダーを適材適所に使いこなした、オンリーワンの家づくりを学ぶ
完成見学会「こんにちはの会」訪問レポート
Nagaiki-工房さんは、千葉県長生郡を拠点に、北米式ツーバイフォー工法にこだわった家づくりをされているハウスビルダー。設計、施工、施主との打ち合わせ、業者の手配など全てを請け負い、「住み手の顔が間近で見える家づくり」を目指しています。また、新建材を使わず、漆喰や無垢材などの自然素材を適材適所に取り入れることにもこだわりが。住み心地が良く、時が経つほどに味わい深くなり、大切に住み継がれる家。そんな「長生きする家」を提案したいという意味も、「Nagaiki-工房」という名前には込められているそうです。
Nagaiki-工房さんの想いが詰まった素敵なWebサイトをぜひごらんください!
Nagaiki-工房さんが手がける建築には、外壁、内装、カウンター、家具などにレッドシダーがふんだんに使用されています。じっくりと丁寧につくられた住宅の完成披露会、「こんにちはの会」というイベントが開催されると知り、ぜひ伺いたいと社長の渡邉さんに連絡すると、「大歓迎です」とのうれしいお返事。日曜に社員6名でイベントに伺う計画をたて、千葉の船橋駅に集合! 見学会の住宅以外にも、Nagaiki-工房さん設計・施工のカフェがあると知り、まずはいすみ市にある「ホタルカフェ」さんにお邪魔することにしました。船橋から約2時間の房総ドライブに出発です。
注)こちらのレポートは、2012年に書いたものです。高広木材旧Webサイト「レッドシダーが映える物件紹介レポート」の記事を再掲載しました。
県道から脇道に入り、一段と山深くなる中、細い道を進んでいくと、田畑に囲まれたカフェに到着しました。
レッドシダーの外壁(チャネルサイディング)が、木そのものの色のまま周囲の緑と溶け込み、緑の中にひっそりとたたずむ隠れ家のような雰囲気。
当時のホタルカフェさんのブログには、Nagaiki-工房さんとの出会いやこの地にカフェを開かれた経緯、施主のご夫妻が施工にかかわられた様子などが綴られています。Nagaiki-工房さんは基本的な施工作業を全て2名で行っていますが、施主もただできあがるのを待っているわけにはいきません。安全面を十分に配慮した上で、漆喰塗りや壁材、床材張りなどの作業を施主とともに行うのがNagaiki-工房流の家づくり。「ホタルカフェ」にも、そんな手作りの要素がたくさん詰まっています。
早速店内におじゃましました。店内は、漆喰の白に、無垢の木のダークブラウンが映える明るい空間。窓から優しく光が入ってきます。窓の外の緑も、カフェの一部となって溶け込み、とても静かな時間が流れています。
こちらの壁には、レッドシダーの板材をランダムに張っています。自然塗料のオスモカラーを少しずつ色を変えて塗られたそうです。まるでパッチワークのような素朴なかわいらしさと、木の落ち着いた雰囲気がとてもよく合っています。漆喰の白との組み合わせも上品で素敵ですね。
この板材は節の穴があいていたり、形や長さ、厚みがバラバラな、通常は捨てられてしまう梱包材です。「レッドシダーは捨てるところがない」とおっしゃるNagaiki-工房さんは、ひと手間かけて廃材を上手に取り入れています。こうして見ると、板が不揃いなところも節の穴も、素敵なデザインに見えてきませんか?無垢材特有の色の濃淡もまた、作られたものではない自然の味わいを生んでいます。
手間がかかっても「なるべく捨てない」家づくり
Nagaiki-工房の渡邊さんはご自身のブログで、
「ゴミをなるべくださないこと」に気をつけています。どんなに良い家をつくっていてもゴミ(時には使える資材)を平気で捨てているようでは良い家をつくっているとは言えない。出来るかぎりではあるがなるべくゴミをださないように気をつけている。それでも2tのトラック一杯は出てしまう。少しでもゴミのでない方法の家づくりを考えたい。
と、綴られています。
無垢の木材は同じものがなく、節もキズも含めその木の個性ということをよく理解した上で、適材適所、上手に取り入れる。手間をかけても、なるべく捨てることをしないという姿勢を貫くことができるのは、お施主様と渡邊さんの信頼関係があってこそ。 大切に造られた、自然素材に囲まれた癒しの空間で、タルトやキッシュ、ホエーを使った季節のドリンクなど大変おいしくいただき、心もおなかも大満足でした。
ホタルカフェさんを後にし、「こんにちはの会」へ向かいます。一宮町まで40分程度ドライブ。近くまで来て少々迷いましたが、レッドシダー張りの外観を見て「ここだ!」とすぐにわかりました。
外壁はすべてレッドシダー。横張りのベベルサイディングがふんだんに使われています。無塗装なのもこだわりです。時が経つほどにグレーに変化していく木材本来の表情を大切にしたいとのこと。 こちらは建物の裏側からの写真です。本当に全面レッドシダーに包まれていますね!
※レッドシダー外壁を、塗装せず自然の風化にまかせた場合と塗装した場合のメンテナンスについてまとめた、「設計・施工について」塗装仕上げとメンテナンス のページもぜひごらんください。
横張りだけではなく、瓦葺きのように板材を重ねて別の表情を出している部分もあります。こちらも端材を上手に利用しており、外観デザインにNagaiki-工房さんの個性が加わった印象です。
さらにNagaiki-工房さんらしさがよくわかるのがこの玄関ドア。枠材は「超ラフ」にしたいとのご希望で、高広木材にて原料を吟味し、カナダの工場で挽いたままの荒々しい面をそのまま活かした板材を特注で作製しました。白いチョークは製材時にカットする寸法を書いたものですが、なんと消さずにそのまま使用してあり、びっくり!ワイルドな部分ときちんと仕上がった部分とが上手く調和していて、単調なデザインではないオーダーメイドのドアになっているなと感心してしまいました。
素材感がある粗木仕上げをありのままデザインに
超ラフ材は、ガレージドアの枠にも使われています。既製品のガレージドアは、木製であってもスチール製であっても素材感の違いでかなり目立ってしまうと考え、手作りのドアにしたそうです。家との素材の統一を図ると同時に、あまり主張せずにガレージドアの存在を確保する。あえて枠材は荒々しいまま使うことで、新しいのにすでに味わいがあり、周りとなじむドアに仕上がっています。
部屋の中に入り、室内も見学させていただきました。
伺った日はとても蒸し暑い日でしたが、一歩室内に入ると空気が一変!漆喰や木材の調湿機能によるものなのでしょうか?とても涼しく感じました。藁スサ入りの漆喰の壁は、休日ごとにお施主様ご夫妻が参加され自身の手で塗られたそうです。開放感がある広い空間には風が気持ちよく通り抜け、爽やかな空気に包まれている気がしました。
キッチンの天板もレッドシダーです。ウレタン塗装などはあえて施さず、木材の質感をそのまま活かして仕上げてあります。レッドシダーはやわらかい木なので傷がつきやすいですが、大丈夫ですか?と渡邉さんに伺うと、「それが良いのです!」とのうれしいお言葉。お施主様ももちろん承知しており、「早く熱い鍋を置いて焦がし跡を付けたい!」とおっしゃっているそうです。傷も鍋の跡も使いこんだ証。汚れないようにではなく、汚れたら掃除し、表情の変化を味わいとして楽しむ。そんな姿勢がとても素敵です。
天井にも一部分、レッドシダーが張られています。ざらざらとしたラフ面をそのまま表にし、幅も色もまちまちの板を使用しています。このワイルドさと色の濃淡が、部屋のアクセントになっています。通常、天井や壁、床の板張りをするときには、同じ色を揃えることが多いですが、レッドシダーの特徴を活かし、あえて「色のコントラストを楽しんでしまう」のがNagaiki-工房さん流です。
適材適所にレッドシダーを使いつくす
浴室にもレッドシダーが張られています。レッドシダーは、他の針葉樹に比べて収縮率が低く、濡れたり乾いたりを繰り返しても、反り、曲がり、割れが起きにくい樹種です。水に強く腐りにくい点も浴室には適しています。レッドシダーの性質が最大限生かされていて、まさに適材適所です。
渡邉さんは浴室へのこだわりを、ブログの中でこのようにおっしゃっています。
少しでもリラックス出来るようにと浴室の空間づくりに力を入れています。「木を張ると腐るのでは?」と思われがちですがこれも施工方法とメンテナンス次第です。最近では非常に優れた換気扇があり24時間の換気と暖房が付いています。このような換気扇を付け常に湿気から守ることや水に強く腐りにくい木材を使用する事により木を張る事が出来、より快適な浴室空間が作れるのではと思っています。
大きな窓からは緑が見え、風が入ってきます。木の香りに包まれながらゆっくり楽しむバスタイム。とても気持ちがよさそうです!
2階に上がり、寝室におじゃますると、手作りの机や棚がありました。これもすべてレッドシダーなのです。
ベッドもNagaiki-工房製です!
オーダーメイドの家具は、飾り気がないシンプルなデザインながらも、手作りの温かみがありました。建物との統一感もあり、自然に部屋になじんでいます。「レッドシダーは捨てるところがない」という渡邉さんの言葉の意味が、ようやくわかったような気がしました。 荒っぽい仕上げや節の穴も自然のものの良さとしてデザインに取り入れる。自然素材ならではの材のばらつきも「あたりまえのこと」と考え、手間はかかっても現場仕事で上手に切り回してきちんと仕上げる。そんなNagaiki-工房さんの徹底したこだわりによって、「想いのこもったたったひとつの家」が造られています。自然素材に触れる心地よさ、大量生産される画一的な住宅にはない温かさを感じることができた見学会でした。
ひととおり見学させていただいた後、なんとエスプレッソコーヒーをごちそうになってしまいました!Nagaiki-工房さんが手がけたカフェのオーナーの方が、「こんにちはの会」に応援にいらしており、一杯一杯丁寧にコーヒーを入れてくださったのです。苦みがある大人の味でとても美味しかったです。
ガレージの隣に張られたテントで、コーヒーをいただきながらくつろいだ時間を過ごしました。
材料を販売する側の私たち高広木材ですが、材料納品後、どのように使われているかを知る機会はあまり多くありません。日々目にしている製品が、大切に施工され、さまざまな部分に活躍しているのを実際に見ることができ、とても勉強になりました。「こんにちはの会」は4日間にわたり開催されたのですが、実はこの訪問の後も、高広木材の内勤スタッフや倉庫スタッフが連日入れ替わりで見学に伺わせていただきました。他のお客様も見学にいらっしゃっている中、大変お世話になりました。貴重なお時間を本当にありがとうございました!
このレポートから2022年現在、約10年が経過しています。無塗装の外装の経年変化を訪ねるレポートも今後ぜひ企画したいです。(スタッフより)